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「あれ、倉川さん? えーと……」 「大丈夫ですか? どこか具合いが悪いんですか?」  光一はぼんやりとしているが体調が悪い様子ではない。 「うわ、僕、寝てた……? すみません、このところ寝不足で」  来月末に閉店するカフェロートは、つくばから土浦に移転してレストランとしてリニューアルオープンする。光一は睡眠時間を削って閉店と開店にかかわるさまざまな作業を行っているのだろう。睡眠時間が足りなくて気絶するように寝るのは、李花も東京の会社でひどいパワハラを受けながら働いていた頃に経験があった。 「あ、ランチに来てくれたんですよね。今用意しますね」  そう言った光一の声には張りがなく、足元も少し覚束ない。  今寝てたのがたまたま店のカウンターだったから良かったものの、運転中だったらと想像するだけで李花の背筋に冷たいものが走った。調理スペースで立ち働く光一を、李花はずっと目で追っていた。 「お待たせいたしました」  テーブルにカレーセットが置かれた。以前は複数のランチメニューが用意されていたが、光一が多忙な現在はカレーセットだけになっている。 「あの!」  カレーセットを置いてカウンターの向こうに戻ろうとする光一を李花が呼び止めた。 「もしよかったら、お店のこと、何かお手伝いさせてもらえませんか?」  李花の申し出を聞いて光一は目を見開いた。その目は痛々しいほど充血していた。
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