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笠間の街は陶炎祭に向かう車で混雑していた。会場近くの臨時駐車場にどうにか車を停める。
陶炎祭の会場は広大な公園で、そこに出店者たちのテントがひしめいていた。陶器だけではなく、食べ物も販売している。ピザやワッフルといった軽食のほか見慣れない世界各国の料理もあり、辺りにはおいしそうな匂いが漂っていた。
食べ物はとりあえず我慢して、陶器を見て回る。事前に調べた情報によれば、特徴がないのが笠間焼の特徴らしい。有田焼や九谷焼のように色鮮やかな絵付けはない。土そのものの温もりを感じるマグカップや、白や青の釉薬が美しい茶碗など、さまざまな陶器が並んでいる。
「さっきの店もよかったけどこっちの店もいいなぁ……うーん、悩むなぁ」
光一が顎に手を当てる。「悩む」と言っている割に口元が緩んでいる。陶炎祭で実物を見て「これは」と思った窯元に発注しようと思っていたが、見て回っているうちにあれもこれも良くなってしまって決まらない。
「一つの窯元に絞らないでいろいろな食器を買っちゃいましょうか。レストランで提供するのは家庭料理だから、いろいろな食器があったほうが家庭の雰囲気があっていいかも」
李花が提案すると、光一の目が輝いた。
「それいいね! うちの実家も親戚が集まったときなんかバラバラの食器出てくるし。『笠間焼』で決まっていればある程度統一感あるからいいかも」
そこからはいいと思った食器を片っ端から購入し、量がまとまると宅配便ブースへ向かった。
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