15人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「なんか、晴れてきたよ!」
車中ずっとスマフォに夢中だった結香が窓の外景色を眺めながら言う。
「結構前から晴れ間は見えてるけどな。まあ、良かったよ雨じゃなくて。」
拓海と結香は、仕事を兼ねた小旅行で東北道で車を走らせていた。
目的地は郡山。仙台入管郡山出張所でジュリーの在留資格の延長手続き。ジュリーの送迎は必要ない。彼は勝手にタクシーで来て、タクシー帰ってゆく。小一時間ほどで終わる仕事だ。
その後、噂の鯉料理を食べに行き、華の湯で一泊コース。
鯉料理の予約も、ホテルの予約も気づいたら結香がすべて手配していた。
さすが、仕事が早い。
「やっと那須か…」拓海は呟く。
車は那須のICを通り過ぎたところだった。
「ねぇ、那須高原のサービスエリアでちょっと休憩しない? 」
「10時か。時間あるし、そうしよっか。俺トイレ行きたいし。」
「ふぅ‥‥」
(結構出たな…、よかった行っておいて)
周りを見渡し結香を探す。
遊歩道入り口から見える雑木林を眺めていると、拓海の鼻は澄んだ風の香理に包まれた。
「那須か…」
拓海は遊歩道に足を踏み入れ、木々の匂いを感じていた。
ー澄んだ空気…、この新緑の匂い…また僕は思い返していた。
あれは……、僕が24歳頃のこんな暖かな天気の良い日だった。
最初のコメントを投稿しよう!