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書斎に場所を移し椅子に座り、考える。
(また今日も思い出してしまった。なぜだろう)
PCを起動し、請負契約書等の格納されたフォルダ一覧を眺めながら
結香の笑顔が脳裏に浮かんだ。
(結香は美人で聡明だ。気立てもいい。趣味も合う。じゃあなんでだろう、何も不満なんてないというのに…)
ーどうしても消えてくれない。ー
外は雨が降り始めていた。
僕は立ち上がり、空気の入れ替えの為に開いていた窓から外を見る。
(…これは、結構な雨になりそうだ。)
降りしきる雨をぼんやりと眺めていた。
ここはマンションの19階、眼下の家々がざわついている。急な雨のせいだろう。
やがて雨足は強くなり、飛沫が顔に飛んできたので、窓を閉めた。
「冴子……」
ー五月の雨…、また僕は思い返していた。
あれは……、僕が23歳の五月、今夜の様な雨だったっけ…。
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