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降り続ける雨の中、僕は車を停めた。助手席の玲子に声を掛ける。
「着いたよ…」
(今日も普通に彼女の実家に着いてしまった)
僕は彼女と出会ってひと月、何も進展せずに他愛のないデートを重ねていた。プラトニックラブというやつだろうか。
(僕も随分とピュアになったもんだ…。いや、四つ上という未知の領域に恐れをなしているだけか…?)
フロントガラスを叩き続けては流れる雨に歪む家並みの中、彼女が呟いた。
「今日何の日か知ってる?」
「…ん? みどりの日だよね」
「そういうんじゃなくて、今日でタケルと出会って一カ月なんだよ」
「あーそうなのか」
(一カ月記念日ってやつか…)
彼女は何も言わず外を見ている。
(これは待ってるのか…? いったほうがいいのか…? いくべきか? でもそんなつもりないとか言われたらどうしよう…)
心臓の鼓動が早まる。
「どうしたの? いつもは喋りまくりなのに」
彼女が笑う。
「あのさ、…俺と付き合ってもらえないかな?」
(言ってしまった)
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