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その日もレインさんと同じシフトだった。いつも通り制服であるチノパンの後ろポケットにトランシーバーを入れて、片耳イヤホンを耳につける。
ステージ上では演目が行われていて、私はステージ上が表示されたモニターを見ていた。
演目は『オズの魔法使い』少女のドロシーと子犬のトトが住んでいたカンザスから東の国へ竜巻に飛ばされて、カンザスに戻るために東の魔女を退治する話だ。
次の演目に向けて楽屋でパレードの衣装を準備をしつつ見ていると、レインさんと目があった。レインさんは大魔法使いのオズ役をしている。
モニター越しでもステージ上は輝いていた。私はまだ役を与えられていない。チストリーという東の魔女が使役する妖精役を覚えている途中だ。
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「そうそう、そんな感じね。あまり言葉を覚えられない小さい子どもには簡単な言葉で教えるといいから」
レインさんに口頭で教えてもらいながら、私はメモ帳にセリフや立ち位置を書いていく。あまり使わないと思っていた100均のメモ帳はあっという間に埋まっていった。
メモ帳に書くところがなくなるたびに、私は少しずつ成長していると実感する。
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そして、最後はエムおばさんのナレーションで物語は終わる。エムおばさん役はシェリルさん。モニター越しなのに私はシェリルさんの目線に悪寒を感じて身震いをしてしまった。やっぱり、私はこの人が苦手だ。
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