地獄のシチュエーション

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「ゆんちゃん、今度ステメン(ステージメンバー)でご飯行こうと思ってるんだけど、一緒に行かない?」  お世話になっている先輩に誘われて、一瞬だけ悩んでしまった。 「せっかくなんだしおいでよ。このメンバーが来年も一緒にいるかはわからないんだからさ」  返事に迷っていた私に声をかけたのはレインさんだった。  たしかに、3月になれば別の場所に就職する大学生は多い。有休も使えるのでシフトを多く組んでも大丈夫か、とシフトコントロールセンターの人に言われた気がする。  出勤する前だったし、適当に返事をしたけどお別れする人は少なからずいる。それにシフトが重なったことがない人とも話してみたかった。 *** 「あ〜ゆんちゃんも来たんだねぇ」  飲み会の場にもシェリルさんはいた。私にロックオンをすると隣に座ってくる。ニコニコと笑ってはいるが、目は笑っていない。何かの怒りを隠しているようだった。  運ばれてきたサラダを小皿にとりわけながら、みんなの話を聞く。会話に入らなくても、こうして人間関係を知ることは大事だ。  シェリルさんのように知らず知らずの内に目の敵にされるかもしれない。ステージメンバーは個性的な人が多かった。  現在進行形でお笑い芸人をしている人、俳優の息子を持つ人、主婦さんに、法律を勉強している大学生など、とにかくいろんな人たちが一緒の職場で働いていたことを知る。  学校という閉鎖的な環境に比べて大きく世界が変わったような感覚がした。 「ゆんちゃんは働きものだねぇ〜」  私が何かをするたびに、シェリルさんだけは変に反応してくる。レインさんは家で私のことをなんて話しているのだろう。私は特に何かをしたわけでもないし、身に覚えがない。  とにかくシェリルさんは先輩同士の繋がりがなかったら関わりたくない。そんな人だった。
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