ep5 【事象集束のトリグラフ】

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 でもそんな時に私と出会い、私はそこで妙に感づいて、例の言葉をかけたという。  空と人を重ねた張本人、あの言葉の主は前の世界の私だった……仲良くできそうも何も、あのカフェからの帰り道で聞いた話は全部、私の事だったわけだ。こんなことってある? って思わされた。  その後はお互い悩みを語るようになり、私が家を出たいということを零したわけだけど、政宗もまた直感的に何かあると思い、私にある提案をしたという。  それは、一度ちゃんと話をしてみるのはどうかというもの。  私ははじめ、もちろん渋っていたようで……でも押しに押され、とうとう母親について当時のことを父に聞いていったそうだ。  ただ、政宗はそれ以上のことを教えてくれなかった。これは直接聞くのが良いよ、とだけ言って。  だから私は後日、政宗のくれた勇気と私の成長した心を持って、父に直接話しをしてみることにした。  すると父は驚きを隠せず、声が裏返るばかり。私から話しかけるなんて、ずっと無かったから、無理もないわけだけど。  そして聞いてみれば……私が思っていたことと全く異なる答えが返ってきて、今度は私が裏返ってしまうオチ。  父は……母の持病の治療をしようと全国を巡って医者を探していたらしい。  実のところ、母とよく口論していたのは治療をするかしないか、というものだった。母は病院嫌いだったことは知っている。
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