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ここはどこだろう?
広大な墓所を思わせる暗い空間に、物言わず立ち並ぶのは無数のジュズだった。本来は時空を越えて幻夢境になだれ込むはずだった恐怖の軍隊は、唐突な門の消失によって休眠状態をよぎなくされている。
もよりの一室、窓の外を眺めてたたずむのはひとつの人影だ。とめどなくガラスをたたく吹雪の破片に、その深遠な瞳がたたえるのは絶望か、はたまた希望か。
「ホーリー様」
いきなり自動扉を開け、部屋に駆け込んできたのは一体のジュズだった。耳障りな砂嵐の混じるたどたどしい人語で伝える。
「久灯瑠璃絵は失敗しました」
「知っている」
一ミリも姿勢を崩さず、ホーリーと呼ばれた人影はうなずいた。
「ついさっきまで〝瞳の蒐集家〟を遠隔操作していたのはわたしだからね。あの瞬間での突然の召喚術は意外だった。思わず負けてしまったよ」
めまぐるしく瞳の光を回転させながら、ジュズは続けた。
「あの時代に発生した〝カラミティハニーズ〟という要因はそうとう厄介です。前例がありません。先も読めません。どう対処しますか?」
かすかに人影は首をひねった。
「おかしいな。わたしの記憶している時間軸には、そんなものは存在しない。どうやら我々の時間干渉の影響で、あの時代に想定外なものが生まれてしまったらしいね」
人影の見つめる景色は、氷河期をむかえた都市の一面の雪化粧だった。
幻夢境と地球が巻き起こした戦争によって世界は衰退し、新たなる〝星々のもの〟の勢力に地球は侵略されたのだ。生命維持・気象操作・防衛等をかねたひとにぎりのドームの内外で、いまもまだ抵抗勢力とジュズの攻防は続いている。
窓の外を見つめたまま、人影は告げた。
「つぎはわたしが行く」
ホーリーは静かに拳を握りしめた。
カラミティハニーズは帰ってくる……
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