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衰弱
無機質な部屋の窓から見える散りはじめる木々の葉に、視線を落としてぼんやりと過ごしていた。独特な匂いと独特な雰囲気をもつこの場所は俺には居心地がいい。
「にいちゃん、若いのに病気かい?」
驚いて体を震わせ、隣のベットを見る。白髪の頭に強面の顔、病院服の隙間から見える傷跡。瞬時に裏の人だと悟った。恐る恐る会話を続ける。
「えぇ、胃潰瘍みたいで」
「そうかい。俺も若い頃はストレスで何回かやられたよ」
「そうなんですか?大変ですね」
「まぁ三回もなる頃には慣れちまったけどな!ハハハハ!」
明るい声と豪快な笑い方が印象に残る老人だ。
「にいちゃん歳は?」
「二十歳です」
「若いな〜人生まだまだこれからだな!俺なんてもう七十五だから死ぬ以外することないんだよ!ハハハハ!」
「そんなことないですよ。まだまだ人生これからですよ」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
そう言って笑う老人の笑顔はどこか不気味な雰囲気をかもし出していた。
「・・・やっぱりこんな身てくれは怖いかい?」
その言葉はとても悲しげで潮らしく、孤独すら感じさせる言葉だった。
「少し警戒はします」
「そうだよな〜」
そんな言葉を呟く老人はやっと一人の『老いたもの』になれているようだった。
「俺の話聞いてくれるかい?」
「はい、」
それから語られる老人の昔話を聞いて一日が終わった。
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