十月 七日

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十月 七日

 今日は雨で、テンションが上がった。雨は好きだ。みんなが傷つくし、みんなが下を向いて歩くから。雨雲に覆われた日だけ、私の心は晴れる。  学校から帰ってくると、彼が裏門にいた。雨に濡れた彼の顔は、泣いているように見えた。ついさっきまでのメールでのやりとりを思い出して、声をかけようとした時彼はいってしまった。メールでは滅多に見せない彼の弱気な態度に驚いて、からかうような事を言ってしまった。謝罪の連絡を入れると、落ち着いたのか彼も謝ってくれた。彼が悩んでいる事は私には理解できないが、あれが普通の人の悩みなんだろうなと思い、少し気分が落ち込んだ。  私の好きな言葉、でも私を縛る言葉。理想的な人生を思い描かせて、現実を見せつけてくる残酷な言葉。あんな言葉で誰かの人生が変わるはずない。人は沢山の言葉を見聞きして、沢山の言葉を捨てていく。その中で取捨選択をして、自分の言葉を作っているのだと思う。  雨雲はいつか遠ざかり、太陽に負けてしまう。翌朝登る朝日の、引き立て役でしかない黒雲は、私の心を受け止めてくれる。
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