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14.君想う花
バレンタインの数日後。
はじめての家政部と美術部のコラボは大成功だった。
結城が満面の笑顔で言う。
「ホント、よかったわー!!ありがとな、保坂」
「いや、こっちこそ。一緒に出来て良かった。皆が頑張れたのも、結城や佐田の差し入れのおかげだよ」
「そういえば、佐田が泣いて大変だった」
「え、なんで?」
「保坂、昼休みに中庭で神と抱き合ってたことあっただろ。あれを佐田も見たんだよ」
「⋯⋯え?あ、ああ!!!佐田って、本当にそうだったの?」
結城が目を細めて頷く。お前、鈍いよなと言いたげに。
⋯⋯ごめん。おれには巧だけなんだ。
バレンタインに、巧は一輪のパンジーをくれた。
細い針金に緑の紙テープを巻いて茎や葉まで作られたそれは、見事な出来栄えだった。
おれからは、弥彦のデザインしたパッケージのチョコを渡した。青いパンジーの紙の花を添えた中身は、結城の作った特製品だ。
巧はとてもきれいな笑顔で「ありがとう」と呟いた。一緒に食べようと言われて二人でチョコの食べさせっこをした。やたら恥ずかしかったけど。
部屋の机の上に、枯れない花が咲いている。
不器用な巧がくれる花は、何よりも雄弁に心を語る。
──私のことを想ってください。
ずっと、⋯⋯ずっと。
お前のことだけを想うよ。
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