7 『それはダメだろ』

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7 『それはダメだろ』

 平田と別れ帰宅すると、姉にお帰りと言われ両親の帰りが遅いことを知った。優人は五人家族であり、兄と姉を持つ。  兄は現在一人暮らしをしており、たまにこちらへ顔を出す程度だ。  夕飯には降りてくるように言われ、素直に返事をすると解放された。  姉のことは好きである。煩いことは言わないし、面倒見が良い。末っ子の自分は甘やかされているなと思う。  兄のことは……。  少し切ない気持ちになりながら、自分の部屋のドアを開く。  優人は無自覚なお兄ちゃん子だったと思う。じゃれては怒られていたが、優しくて、よく構ってくれる兄が大好きだった。  何故自分を置いて家を出るのだろうと、不思議に思ったこともある。  だが、兄には兄の事情があることを後に知った。    ベージュのチノパンのポケットからスマホを取り出すと、ベッドに腰かける。気が重いが、結愛に連絡しなくてはならない。 「別れた意味のなさよ……」  ため息をつきつつ、ロックを解除してアイコンをタップする。  消せなかった連絡先。  どれだけ自分は、結愛に未練があるのだろうか。  ワンコールで相手と通話が繋がり、思わず”暇人か!”と心の中でツッコミを入れた。 『きた!』 と結愛。 「俺が嘘ついたことあるかよ」 と呆れ声で返せば、 『どうかなー』 と、とぼけている。 「で? 何。俺たち別れたし、彼氏いるんだろ?」  極めて冷静に冷たくあしらったつもりだった。  しかし、 『ヤキモチ?』 と言われてしまう。 ──そうだよ、こういうやつなんだよ!  上手くいかなかったのは、いつでも優人が結愛を愛して当たり前という態度を取られていたから。  それでも、結愛の方からも好きと言ってくれたなら心のバランスは保てただろう。そこが結愛のズルいところだ。  なんと返そうか迷っていると、 『ねえ、優人』 と弱気な声を出して優人の名を呼ぶ。 「なんだ?」 『抱いてよ』  そこで優人は頭を抱える。 「無理」  即答するしかなかった。 「そういうのは彼氏に言えよ」 『連絡しても、返事来ない』  大方、束縛が過ぎる。求めすぎるのではないかと思った。  結愛とお付き合いしている時、優人も大変な思いをしたことを思い出す。  自分以外の異性と連絡を取るなと言うのは分かる。しかし、話すな、挙句の果てには同性とも関わっちゃだめと来たものだ。  自分は異性の友人がたくさんいるにも拘わらず。 「だから浮気するのか?」  自分が相手の立場だったなら、と思う。恋人が元カレと浮気だなんて最悪だ。その片棒を担がされるなんてたまったものではない。  ”だって……”と泣き始める結愛。こりゃ夕飯に降りていけないなと肩を竦めるのだった。
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