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第6話:メール
家に帰ると、急いデスクトップPCの電源を入れる。HDDのガリガリする音がしてから暫くすると、Windows 98の文字が浮かびあがる。私は、キッチンにあるコーヒーメーカーの電源を入れ、コーヒーを入れた。テーブルに戻ると、フォルダやファイルでいっぱいのデスクトップが表示されている。私は、デスクトップ上のOutlookショートカットをクリックした。コーヒーの良い匂いがしてきた。私は席を立ってキッチンに行くと、白い大きめのマグカップにコーヒーを入れた。 時折、モデムの電子音が響く。会社のネットワークと違い、電話回線でネットワークに接続するので、インターネットへのアクセススピード呆れるぐらい遅い。私はPCのモニターを除きこむと、Outlookが牛歩戦術でもしているかのように、ゆっくりと新規メールをダウンロードしている。私は、コーヒーを一口飲んだ。やっぱり会社の味気のない薄いコーヒーよりも、しっかり苦味のあってコクのあるリッチなテイストのコーヒーは旨い。 Outlookを起動してから三分ほど経過しただろうか、私は会社のPCから転送したメールを見つけるとダブルクリックした。
小野行人様へ
飛行機の中でお話させて頂いた、織部穂波です。
覚えていらっしゃいますか。
あの時は、ありがとうございました。
今、日本に居ます。
また、お会いできたらなって、思っています。
本当に、ありがとうございました。
織部穂波
私は直ぐに彼女に返事を書いた。
織部様
メールありがとう御座います。
あの時の事は、昨日のように覚えています。
正直にいうと、メールを頂けるとは思っていませんでした。
社交辞令だとしても、会いたいと思って頂けるのは、正直嬉しいです。
お住まいは、どの辺りですか。
お近くならば、一緒にお食事でもしたいですね。
もし宜しければ、またメールを下さい。
小野行人
これで彼女の名前を知る事ができた。それで充分に満足すべきなのだろう。彼女に再び会って話をするなんて高望みは、持つべきではないだろうな。恐らく、彼女からメールは来る事はないだろうから。私は、PCをシャットダウンすると、夕食の支度に取り掛かった。
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