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第一章 妖怪の猫ブリーダーに出会う
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行く人がコートを羽織る季節がやってきた。枯れた枝が手を伸ばすように、空に向かって伸びて行く。そんな寒さが身に凍みるある日、私は八王子駅から、新宿発、松本行きの特急列車『あずさ』に乗った。平日だから列車は空いていた。
駅ビルで購入したサンドイッチを、列車の中で昼食に食べたあとは、静かに目を閉じた。しかし眠れずぼんやり過ごした。
松本が近づくと、左手に綿帽子をかぶった連なる峰が窓から見え、初めて見る北アルプスに、感動を覚えた。長野県松本市は、槍ヶ岳や穂高連峰、乗鞍岳など北アルプスの三千メートル級の高山が九座ある街であることは、知っていた。美しい雪山の峰を見たとき、納得した。県庁所在地の長野市に勝ることはないけれど、劣らない都市である。今回の私は『センチメンタルジャーニー』だ。
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