同じ箱の中

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「それってこだわりって言わなくない・ってか元はどんな姿だったの?今のその姿は本当の姿じゃないの?」  そう言う川枝の眼ははどこか期待を込め一村を見ていた。  そんな川枝に一村は一度視線を向けてから天井を仰ぐように見て言う。 「元の姿はそんなに君たちと変わらないよ。だからこの姿は本当とも言えるかな?ただ未来では顔なんてただの飾りだね」  厨二病ってやつ?高二病とも言わなかったっけ?と近くにいた男子グループが馬鹿にするように話し出す。  それにつられ、沈黙していた教室は再びざわめきだした。  川枝はこの際だからと気になっていた事を質問する。 「あと最初の自己紹介で言ってた、この星が五年後になくなるって本当なの?だとしたら一村君は私たちに危機が迫っているのを伝えにきたの?」 「なくなるのは本当。でも君達に伝えに来たわけじゃない。それに今そんな話をした所で世間は信じないしね」  一村の話によると三年後に巨大な隕石がこの星に落ちると言う情報が出回り、残りの二年間で移住の準備をする。そして五年後にこの星に隕石が衝突し大爆発が起こり選ばれなかった人間は皆死ぬ。  移住し生き残れるのは選ばれた優秀な人間だけらしい。  数日後、クラスでの悪口のメインターゲットは一村となった。  変な事言っている転校生、厨二病、キモい、などと主に言われている。  自分への悪口が減って川枝は少しだが心が楽になるのを感じつつも、複雑な気持ちになった。  人の悪口を聞かされるのはいい気がしない。  そんな中一人、川枝や一村を庇う人がいた。  咲田ゆねと言う女子生徒だ。咲田ゆねは容姿も良く、誰に対しても平等に接する。それ故彼女を嫌う者はいず、彼女が発言することで悪口がヒートアップすることがない。  川枝はそんな咲田が好きだった。それが憧れなのかそれとも、恋愛感情なのか川枝には分らなかった。 だからか、恋愛話は避けてきた。 「川枝さんはゲームよくやってるけど、そんなに好きなの?ゲーム」  いつものようにさっさと帰ろうしたところ一村が話しかける。 「うん。一村君はゲームとかやらないの?」 「やってたよ。ここに来てからはまだやってないけど」  未来ではどんなゲームがあるのか聞くと、未来の世界では人一人が自由に動けるくらいのスペースがあるカプセルに入りVRゴーグルを付け遊ぶのが主流らしい。 「川枝さんって、僕が言う未来から来たっての信じてくれてるの?」  今までネット上に未来から来たなどの書き込みなどは話題になったりした。けど大体は守秘義務がどうたらこうたら、過去が変わっちゃうからどうたらこうたらとうやむやにされてうやむやに。  結局、予言はことごとく外れその話題は自然と鎮火していった。  それらの出来事があった当時、川枝は未来人と言う存在にわくわくしていた。だがネットと言ういくらでもデマがが書けるところでの事。その時はがっかりしたが、今回はネットではなく実際に公言している人物が現れた。  当然ネタである可能性の方がかなり高い。だがどうしても未来人と言う夢のある存在に川枝は本物であって欲しいと心のどこかで機体してしまっている。 「信じてるって言うのかな……。そうだったら面白いとは思ってるよ」  曖昧な返答ではあったが、一村は嬉しそうな表情をし言う。 「やっぱり君にして良かったよ!」  そのあと小声で「やっと誰かに存在を認められた気がする」と言ったが川枝には聞こえておらず、川枝の頭にははてなマークが浮かんでいた。  ほとんど誰とも話さず過ごしてきた川枝だったが、一村がやってきてからは未来の話しなどに花を咲かせている。  そんな川枝をよく思わない女子生徒は今までの、変人、人殺しの子と言う悪口にアバズレと付け加えた。 放課後、母から買い物を頼まれているため足早に教室を出ようとした所、川枝を良く思ってない女子生徒たちが呼び止められた。  近くにいた一村も同じく呼び止める。
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