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不気味に囲われたその場所にエリーは興味深そうな視線を向ける。
「ねぇ、もう行きましょう?」
エリザベートがエリーに声をかけた。
一刻も早くその場を立ち去りたいというように、まっすぐ前を指差している。
その様子を見てエリーはエリザベートが、時計塔を怖がっていると解釈したのか頷いた。
二人が歩きだすと同時に、バサバサという羽音とガアガアという鳴き声が響く。
時計塔のてっぺんには数匹の鴉の姿がある。
――ガア!ガア!
威嚇するように鳴く鴉たちに追われるように二人は歩みを早めた。
走るように時計塔を後にしながらも振り返ったエリーの瞳には、一際大きな鴉が映る。
「…………っ!」
その鴉はくちばしに何かを咥えていた。
丸く、少し黄ばんだ白――そして、中央には違う色。
視力の良いエリーには、目を凝らさずともそれが何色であるかがわかる。
「ひっ……」
息を飲むと同時にエリーはその場に崩れ落ちた。
視線は鴉に向けたまま、小さく震えている。
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