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路地裏の遊戯
瓦斯灯の明かりが差し込む、深夜の路地裏。
薄暗いその場所を息を切らして裸足で走る少女。彼女を追いかけるのも、また少女。
深夜の鬼ごっこ――ではない。
追われる側は足裏に血が滲んでいるにも関わらず全力で逃げ、追いかける側はその手に鋭利な刃物を持っている。
楽しそうなのは追手だけで、獲物は命からがら逃げ出しているのだ。
「捕まえた」
鬼が迫り、裸足のまま逃げる少女は追い付かれてしまう。
肩を掴まれ、上がる悲鳴。それも、一瞬だけだった。
「あはっ」
獲物があげた悲鳴と同時に、喉を刃物で切り裂く。
傷口から吹き出る血飛沫を浴びて恍惚の笑みを浮かべながら、少女は切り開かれた喉に唇を寄せる。
どくどくと流れ出る血液に舌を這わせ、じゅるりと音を立てながら貪るように鉄錆の味を喉と胃に流し込んだ。
ぴちゃぴちゃという唾液と血液が混ざる水音が闇に響く。
先程まで、頭をもがれた虫のように痙攣していた身体もだらりとたれ、生気を失っていた。
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