二人だけの隊商

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 5年前のある日、ダン達の隊商はボロボロの酷い有様になって戻ってきた。  微妙な空模様の中、遅れていた日程を取り戻す為に急いだ帰りの道中で激しい砂嵐に巻き込まれてしまったらしい。  『商品は全部パアになったけど、命だけは助かったから良かった』と、生還した者たちが口々に言っていた。  だけど、どんなに待てども、たった一人だけは、帰ってくる事がなかった。そう、その一人がダンだった。  しかも、無茶な進行にダンだけが最後まで反対していたこと。所詮子供だからと意見を無視されていたこと。それらを大分後になってから知った。  幾ら年月が過ぎようが何度も何度もダンを探し続ける僕を、街の人は『ダンは死んだんだ。諦めろ』と口々に言った。中には、愚かだと僕を嘲笑う者もあった。  砂漠は果てしなく広い。何せもう5年以上も前のことだ。生きている可能性なんて限りなくゼロに等しい。  それでも、例え僅かでも僕はダンが生きている可能性にかけたかった。せめて自分だけはダンのことを信じてあげたかったから。  それで、僕はまたいつものようにダンを探そうとして……
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