二人だけの隊商

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「砂漠の中で遭難しちまったんだろ? お前まで砂嵐に巻き込まれるなんて……ほんと、鈍臭せぇやつ」  クククと面白そうに喉を鳴らすダン。その姿は5年前から何一つとして変わっていなかった。 「だ、ダンには言われたくないよ!」 「だな。現に俺は死んじゃったわけだし。……でも、お前は違う。お前はまだ間に合う」 「っ、嫌だよ! せっかく会えたんだからそんなこと言うなよッ」  僕は泣きながらしゃがみ込んだ。次から次へと涙が洪水のように流れてくる。 「泣くなって。事実だろ」  大の大人がみっともないけど、仕方ないじゃんか。この5年間、どうしても会いたかったんだ。 「ありがとな。待っててくれて」 「ほんとだよ! 遅過ぎだし」 「悪かったよ」 「身長なんて、とっくの昔に追い越したんだ。今はダンの方がちびなんだからな!」 「げ。考えたくもねぇ……」  僕にちび呼ばわりされたダンは心底嫌そうに顔を顰める。  あぁ、懐かしいこの感覚。あの頃は傍にあるのがあたり前だった存在(もの)。 「ダン。……僕、もう大人になっちゃったよ」  大人になったら、自分達2人の隊商を作ろうって、何度も誓い合ったのに。 「……ごめんって」  さらに涙を強める僕の背中を撫でながら、ダンが呟いた。ほんと、これじゃどっちが子供なんだか。 「ダァン!!」 「な、なんだよ」  それは、心の底から伝えたかったことだった。 「おかえり」  僕が言った言葉にダンは大きな目をぱちくりさせて、 「……ただいま」  すごく嬉しそうに笑った。
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