二節【選定のはじまり】

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言葉が解らないって【こういうこと】ね。苛立ちが限界に達してしまって、つい声を荒げてしまった。ついでに【あの目】も向けてしまったみたいで、男性は口をあんぐり開けたまま呆けてしまう。はっとした後に、慌てて十字架みたいなバイザーを下ろして俯いて、 「ご、ごめん・・。俺、その・・マナー違反だった、そういうこと聞くの・・。ほんとなんか・・悪かった。名前・・クニサキだから・・その、よろしく」 耳を近付けないと聞こえないくらいの小さな声で名前を教えてくれたから、此方も表情を変えないまま名前を教えた。 「はい、もういいから。もうわたし、皆の所に戻るから。あなたは好きにして。輪の中に加わってくれるなら歓迎するし、関わり合う気にならないなら、せめて人を不快にさせるような言葉遣いとか態度は控えて。わかった?」 腰に手を充てて説教っぽくそう言うと、男性──クニサキは此方の視線を嫌がりつつ首を縦に振った。これってそんなに怖いものなんだろうか。自分で意識したことは無いからよく解らない。なんとなく振り返って皆を見たら、一様に息を呑んでいる様子で視線が注がれていた。 あれ?なんだろう?もしかして空気を悪くしてしまったのは自分だったのだろうか。心の中で『ごめんなさい』と、つい謝ってしまいたくなった。 妹が叱る必要がないくらいずっと良い子だったのは、もしかするとそれが原因だったりする・・のかなあ?
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