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魔獣狩人
怪物は女の血肉や内臓を必死で貪っている。
だが、背後に何者かの気配を感じて怪物が振り返った。
そこには黒いレザーコートを纏った女が立っていた。
艶やかな黒髪のボブカット、物憂げな眼差し、すらりと高い鼻、赤いルージュを塗った唇、クールビューティーという言葉の似合う美人だ。
手にはボウガンを持っている。
「くっ…私が来るのがもう少し早かったら助けられたのに……」
怪物に食われた女の死体を見て、レザーコートの女が悔しそうに言った。
そして、悲しみを湛えた目には優しさがあった。
「誰だ?お前は?グヘヘ……お前も俺に食われに来たのか?」
怪物が下卑た笑みを浮かべた。
「ふざけるんじゃないよ。誰がアンタなんかに食われるもんか!!」
女は吐き捨てるように言った。
「私の名前はアレクサ!!アンタらみたいな怪物を狩るハンターだよ」
女は自己紹介すると同時にボウガンを怪物に目掛けて放った。
矢が怪物の右腕に突き刺さり、同時に激しい熱を帯びた。
「グギャオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
怪物が悲鳴を上げる。
矢の刺さった怪物の右腕から煙が上がり、同時に肉の焦げる臭いが立ち上った。
「やっぱり銀の矢の威力はバツグンだねえ」
アレクサが呟いた。
銀には魔物を滅する力があるからだ。
しかも、アレクサの放った矢はただの矢ではなかった。
聖母マリアを模ったメダイを溶かして作った矢だったのだ。
その聖なる武器が怪物に触れた時、霊的化学反応が起きて怪物の肉が焼かれたのだ。
怪物は痛みを堪えながら矢を引き抜き、地面へ投げ捨てた。
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