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もちろん二人は可愛いし、ちゃんと向き合って話を聞いてやるだけでその涙は自然に収まってくれた。でも、その殺し文句は泣き止んだら一緒に遊ぼうか、だった訳で。いつもなら付き合ってあげてもよいのだが、今回は事情が違う。原稿の締め切りが明後日に迫っている。
今日だけは夕方まで二人の遊びに付き合う訳にはいかない。今後の作家生命をかけた三作目の原稿を落とすことは出来ない。明後日の正午までに編集部の柳田さん宛に初稿データを送らなければならない。私は焦る気持ちを隠しながらも、精一杯の笑顔で二人の頭を順繰りに撫でた。
「ごめんね、今日は一緒に遊べないの」
途端に二人は火が点いたように泣き始めた。
「お、お姉ちゃんでよければ話を聞くよ?」
すると、ケロリとして二人は目を輝かせて、
引っ付いて来た。
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