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「あの子が死んだのは、もしかしたら罪悪感だったのかなって」
「罪悪感?」
「うん。ある日、あの子が急に泣き出したことがあったんだ。ナナちゃんが親身になって色々と聞いたんだけど、あの子、虐待を受けていたらしい」
「……」
「それだけじゃなくて、あの子は年下の子を虐待していたって」
赤池さんの敵として現れた親族の彼女はあすなろの家の子供たちを触れ合う内に自分はずっと間違っていたことをしていたと気づいたらしい。それと同時に罪悪感が現れてしまい、感情が制御できなくなったと。
「一応気にかけていたけれど、あの子が感情を激しくあらわにしたのはその時だけだったんだ。それからは特にこれといったことはなかったけど、本当はずっと苦しんでいたんだろうね」
「……そうだったんだね」
僕の知らないところで壮絶なことが起きていたとはと思うと言葉が出てこない。僕のデリカシー皆無な発言に怒っていた彼女の心の闇の深さについても知らなかった。
まさかこんなことになっていたなんてと頭をガツンと殴られたような衝撃で目がグルグルと回る。
「ごめんね、時雨君。時雨君も当事者なのにずっと秘密にしていて」
とさやかさんが謝る。黙ってしまった僕に対して必死に両手を合わせて頭を下げていた。
「いや、こっちこそ気を使わせてごめん。もし僕が赤池さんやさやかさんの立場だったら同じことをしていたと思う。なんとなく言いにくいことだからね」
「うん……」
しばらく僕らは沈黙する。アブラゼミの鳴き声と胸糞悪いほどの暑さの中でぼーっとしているとマナーモードにしていたスマホがぶるぶると震えだした。
「赤池さんからか」
「あ、私も。ナナちゃん帰ってきたみたい」
僕とさやかさんのスマホには赤池さんからのメッセージが来ていた。
さやかさんには無事に帰宅したこと、そして僕を借り出すので申し訳ないとの謝罪。
僕にはさやかさんに内緒の任務(南方の件)と謝りたいことがあるということだ。
「たぶん、ナナちゃんからも謝罪があると思う」
「そうだね。赤池さんの話をしっかりと聞くよ」
文化祭の準備は始まったばかりだが、バタバタと忙しいわけではない。とりあえずは出し物に使うダンボールなどを集めようということなのでみんながそれぞれ外に出かけて行ったということで閑散としている。
そういう流れで僕も学校を出た。
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