高校生の夏休みはすげー儚い

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 地下鉄で3駅先、地上のカラオケ店が赤池さんとの待ち合わせ場所である。  店に近づくと赤池さんと、見知らぬ女性が二人いた。  一人は僕たちと同い年の女の子で、おどおどとしたようなおとなしい黒髪のおかっぱで地味な子。小動物、ハムスターのように縮こまっていて僕を上目で見ている。  もう一人は僕たちより年上で赤髪の女性。二人の距離感を見ていると赤髪の女性はハムスターの子の姉か親類なのだろうか。赤髪を後ろで一本にまとめた女性は僕を見てこくりと頭を下げる。 「すまないな、この二人は南方の関係者。詳しいことは店で話す」 と赤池さんに続いて僕らは店に入った。  カラオケに入るのは初めてで歌を歌うために入るという認識の僕は戸惑っていた。明らかに僕らは歌を歌うために訪れたわけではない。大事な話をするために訪れたのだ。  そんな僕らがカラオケ店を利用してもいいのだろうかと思っていたが、赤池さんは話し合いで使う場合もあると教えてくれた。たいていその話し合いは修羅場の展開がある場合とか。 「彼女は北園みのり、南方の彼女で妊娠している。この方はあかりさんで北園みのりのお姉さんだ」 「……よろしくお願いします」  妊娠していると聞いた僕は一瞬どういうことだと思ったが、挨拶をしないのはよくないのでとりあえず頭を下げる。  誰の子を……と質問したいところだが、たぶん話の流れでは南方だろうなあと思う。 「……え、僕って何のために呼ばれたの? というかその南方に関係あるって言ったけど、南方には本命がいるってわけ?」 「あー……どこから話せばいいだろう。デリケートなことだし、話にくいことだけどさ」  赤池さんは一応という体で淡々と二人を紹介したのだが、僕の質問に頭を抱える。複雑な問題なので話をしたくないくらいの心境らしい。 「大丈夫よ、さっさと話しても。君は南方くんの同級生で、ここに呼ばれたってことは赤池さんからある程度聞いているってことや信頼があるからなんでしょう? いいわよ、赤池さん。隠してもどうせ風の便りで知ることなんだから」 とあかりさんが口を開いた。あかりさんの了承を経て赤池さんは語りだした。
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