第6話 私の飼い主の彼女がビッチすぎるにゃ!⑤

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第6話 私の飼い主の彼女がビッチすぎるにゃ!⑤

 元彼女がいなくなった部屋で、伸一(しんいち)君はずっと泣き続けていた。 「にゃっ?にゃっ?」  私が大丈夫?と声をかけても、返事をする気力もないようだ…。だが、無言で伸びてきた手が、私の背中を撫でてくれた。こんなときでも伸一君は優しい…。 『泣かないで伸一(しんいち)君! 伸一君が好き! 私が傍にいるよ!』  私は声を大にして、伸一(しんいち)君への愛を叫ぶ。だが私の愛は伸一君には届かない…。それでもいいの、私は見返りが欲しいわけじゃないから…。  飼い猫はね、ご主人様が大好きなの! 見返りなんかなくったって、いつでもいつまでも全力で飼い主さんを愛してるのにゃ!  私は伸一(しんいち)君に寄り添うように、体を密着させて傍に丸くなった。元気になるまで、私が毎晩、猫まくらで癒してあげよう。 ◇◇◇  ―5年後。  伸一(しんいち)君に、笑顔の可愛い家庭的な彼女が出来た。 「なぁ琴子、マリーにストッキング破かれたことある?」 「え? ないよ。マリーがそんなことするわけないじゃん伸一君」 「そう…だよな」  伸一君は、彼女の琴子にそう訊ねる。すると琴子は可笑しそうに、弾けるような笑顔で笑い出した。 「ね~、マリー!」 「にゃぁ~ん!」  そう声をかけ、私を優しく抱き上げて頬ずりしてくれる琴子。私は大好きな琴子に甘えるように、声を上げて答える。  私と私を抱きしめる彼女の琴子を、愛おしそうに見つめる伸一君。 「マリー、ありがとな、俺に気づかせてくれて」  不意に小声で、伸一君が私にお礼を言ってきた。背後に回した片手には、プロポーズ用の指輪が入った箱を握りしめている。  「うにゃ~ん!」  私は応援を込めて、ひと鳴きした。  ここまで長かったね伸一君、今度は幸せになれるよ、さぁ勇気を出して!  あれから5年、私は伸一君の連れてきた彼女たちのストッキングを次々と破き続けた…。  でも、もう伸一(しんいち)君は大丈夫。私が伸一君の彼女のストッキングを破くことはもうにゃいんだから
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