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第7話 飼い主さんのところに帰りたいにゃ…①
僕の名前はメル。宗一郎の猫だ。でも今は宗一郎が何処にいるのかわからない…。それは僕が迷子になってしまったからだ…。
「うにゃ…ん…」
このまま飼い主の宗一郎のところに戻れなかったらどうしよう!?。ううっ…宗一郎のお家に帰りたいにゃ…。僕が項垂れて鳴いていると、優しい声が聞こえてきた。
「メル君! おやつにチュールあるよ~!」
「にゃっ!?」
おやつを差し出す、この優しい女性は南ちゃん。迷子になっていた僕を拾ってくれた女性だ。しばらく前から僕は、この南ちゃんの部屋で飼われている。
チュールを頬張り、恍惚とする僕。悲しくてもお腹は空くにゃ、おやつの誘惑には抗えないのにゃ…
「メル君が気持ちいいのはココか? ココがそんなにいいのかぁ~」
「うにゃ~ん!」
南ちゃんの撫で方は凄く気持ちいい。猫の扱いに慣れていて、南ちゃんの部屋での暮らしは快適そのもの。実家で猫をたくさん飼っているらしく、部屋には猫写真がたくさん飾ってある。
「う~ん、今日もSNSの反応ないなぁ、メル君の飼い主さん…みつからないねぇ」
スマホをみて呟く南ちゃん。
首輪に書かれた名前と僕の写真で、南ちゃんが飼い主さんを探してくれているのだ。
『宗一郎はSNSは見てないと思うにゃ…』
前に宗一郎が、『軟弱なコミュニケーションツールなど俺には必要ない!』と言ってスマホを放り投げるのを見た…。『仕事相手とやり取りしているようでつまらないわ』って女性にフラれ、傷ついて辞めちゃったんだよねSNS…。
僕も人に懐きにくい猫だけど、飼い主の宗一郎もかなり人に懐きにくい人間だ。優しくて面倒見のいい人なのに、取っ付き難さから女性受けがすこぶる悪い。
長身に黒髪に黒ブチ眼鏡。口下手で、女性と話すときは緊張すると敬語になってしまう…。老けてみえるけど宗一郎は20代後半だ、おそらく南ちゃんより少し上ぐらいだろう。
「大丈夫だよメル君、飼い主さんは必ず見つけてあげるからね!」
「にゃ~ん…」
外に出た僕が悪い…。でも今思い返してみると、迷子になった日は家の様子がいつもと違って変だったにゃ…
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