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土の龍神
気がつくと,大きなお庭に立っていた。周りは,咲き乱れるありとあらゆる種類の花や植物に囲まれ,華やかだった。風に花の心地よい香りが漂い,体の緊張をほぐし,癒す。
ここには,鮮やかな緑色の龍がいた。龍が動くたびに,足元に花が生え,龍の体自体も,ツルに巻かれ,そのツルの咲かせる花に覆われていた。
「あなたは,誰ですか?」
風太が訊いた。
「土の龍神だよ。」
龍神が答えた。
「どうして,土の龍神になったのですか?」
風太がさらに質問した。
「モノを育てることに惚れてしまったからかな。だって,自分が水をやり,手入れをし,小さな種から育てたモノがやがて,自分の手を離れ,自分でも予想していなかったようなものに成長するんだよ。自分ではないが,その新しいモノの中に,自分の命が宿っているような気がして,愛おしいよ。すごいことだよ,本当に。
あなたも,いつか,何かを育ててみるといい。」
土の龍神が話した。
「じゃ,新しい命が生み出せるのだから,やっぱりあなたは,一番強いですか?」
風太が尋ねた。
「そんなこと,ない。だって,私が何を育てても,冬が来れば,枯れたり,春まで眠ってしまったりするから,雪の龍神の方が強いと思うんだ。」
土の龍神が謙虚な態度で言った。
風太は,土の龍神の返事を聞いて,龍神たちの力は,甲乙をつけがたい物だと実感した。
すると,目の前の景色がまたまたガラッと変わり始めた。
気がついたら,自分のベッドで,横になっていた。昼寝をしただけなのに,何処となく,自分は寝る前とは,違うことに気づいた。寝る前の自分にはなかった,いろんな力が身についたような気がした。
風太は,起き上がり,窓の外の景色を眺めた。空はいつになく,近くて,愛おしく感じた。
終
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