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会社の休み時間、鈴木は高橋からこう訊かされた。
「俺さあ、この前の連休に○○温泉に行って✕✕旅館に泊まったんだけど、そこにすげえ按摩がいたんだよ」
「どうすごいんだよ」
「それがさあ、むっちゃ美人なんだよ」
「ほう、むっちゃ?」
「うん。むちゃくちゃ」
「そんなにすごいのか」
「うん」
「そんで揉んでもらったのか」
「うん」と高橋は彼特有の幼稚な返事を繰り返してから態と沈黙した。
「おい、何、黙ってんだよ。うんだけで終わらすなよ」
「いや、終わらせたわけじゃねえよ。何たってここからがすげえんだからな」
「だから早くそれを話せよ」
「実はさあ、そのアマ、目くらなんだ]
「目くらの按摩はさして珍しくねえ」
「だけど、その癖、目明きみたいにぱっちり目が開いててむっちゃ美人なんだ」
「だからそれは訊いたよ」
「そんでさあ、なんとさあ、聞いて驚くな。手つきがムチャクチャエロいんだよ」
「ほうほう、そりゃいいねえ。嘸かし気持ち良かったろ」
「うん、おまけにさあ、なんとさあ、聞いて驚くな。ひっひっひ」
「な、何だよ。変顔で笑ってないで早く言えよ」
「なんとなあ、やらしてくれるんだよ」
「えっ、と言うと、あれをか?」
「うん」
「マジで!」
「うん」
「ほんとだろうなあ」
「信じる信じないはお前次第だ」
好色な鈴木はむくむくと色めき立ち、断然行く気になった。「その尼、名前は何て言うんだ」
「だからアマ」
「はぁ?お前、まさか俺を嵌めてるのか。今まで言ったの、全部出まかせじゃねえだろうな」
「違うよ。ほんとにカタカナで書いてアマって言うんだ」
「じゃあ源氏名か?」
「違うよ。本名」
「本名?マジで?」
「うん」
「ふ~ん」と鈴木は唸りながら高橋の顔を穿鑿するべく見つめた後も気が変わるどころかアマを想像し、アマに思いを馳せるのだった。
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