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1話 プロローグ
僕――恒川勇気はごくごく普通の高校生だ。
時折トラブルが発生しても、そのトラブルは陳腐なものだし、
自然消滅するような貧弱なものだ。
そんな僕が通う高校には非凡な先輩が3人いる。
その3人は、少し遠くの「拝葛村」という小さな集落からやってきている。
3人ともすこし前衛的だ。しかも女子からの人気もある。
くそったれ。
悪辣な悪戯をすき好んでおり、隙あらば悪戯を仕掛ける「坂口英明」。
ヘンテコで面白いものがあれば飯を5杯は食える「佐藤雄二」。
この2人はまだ良心的な方だ。
普段は真面目そうな見た目をしていて、世間の目を欺いているけれど、目的のためならどんなことだってやり、この日本にいる限りは彼の目からは逃れられないともいわれる監視網、そしてすべての事象を司る情報網を駆使してどんな事件でもでっちあげるし、どんな事件でも解決するクズ野郎「如月明人」。
この如月と言う先輩が厄介者だった。
おそらく彼という人間ほど、「厄介者」と言う言葉が似合う人間はいないんじゃないかな。いっつも彼は僕の目の前に現れては、
「どうだね、私の弟子になってみないかい?」
と言った。
僕は断固として断った。
「いやです、貴方のような男の弟子になっちまったら、きっと命が腐っちまう」
「そんなまさか。きっと天国へ行けるような清い魂になることだろうよ」
「誓えんのか。神に誓えるんですか」
「当たり前よ。私を誰だと思ってる? 最も神に近い男、如月だぜ?」
まったくの出鱈目を言う如月先輩に、僕はさらに眉を顰めた。
僕たちがいたのは、高校から学生寮につながる通学路の途中にある、「おくちさん」というところの前だった。
「おくちさん」というのは、僕たちの暮らすこの地域の中心に存在している、ダイダラボッチの尻とも噂に高い「努々山」に続く樹海の入り口だ。
なぜ、僕がこんなお化けも近寄らないようなところにいるのか。それのすべては如月先輩に責任がある。だれか、彼をバールで殴れる権利をおくれ。
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