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2話 喫茶店にて
歯痒い気持ちを抑えて、美夏はそうだよ、と返していた。
最上翔太は得意げになって、言った。
「やっぱりそうだろう、あれは幽霊なんかじゃないんだ。みんながオレに仕掛けたドッキリだったんだ」
バスタオルに包まれた、小さな血塗れの狐の死骸を視界の隅においている。
翔太はそれでも「リアルな小道具だなあ」と言っている。
美夏は正直、今すぐ逃げ出したいほどに怖かった。
「なあ、これってどうやって作ったんだ?」
翔太は狐の死骸を抱え上げて、美夏にそう訊ねた。
その時も狐の死骸は「ぐちょり」という音が鳴っていた。
そこで限界が訪れた。
美夏はオエッと吐きだして、倒れてしまった。
◇
「――というのが、あったんだけどね恒川君」
「それをなんで僕に言うんですかねえ」
「君は私の弟子だから」
相変わらず、如月先輩は僕を弟子にしたがる。楽しい楽しい土曜日に駅前の喫茶店に呼ばれては、この話をされたものだから、僕は怒り心頭していた。
この人はいったいなんで僕を弟子にしたがるんだろうか。
それはわからないが、いずれにせよ僕はっ彼の弟子になる気はない。
「というか、それはどういう話なんですか。怪談ですか?」
「いや。ただの気色悪い話」
こいつマジで殴ってやろうか?
僕はテーブルの下で拳を握りながらも、冷静を装う。
「そんな話を僕にしてどうするんですか。情報所有量の自慢ですか」
「まだ私に堅いなあ。気軽に師匠って呼んでいいんだぜ?」
「気軽じゃない。その呼び方は断じて気軽じゃない」
僕は小さく叫んだ。
「というか、何度も言いますけど、僕はあんたの弟子になるつもりはないんです!」
「なぜ? 才能に満ち満ちているのに」
「才能?」
それは初耳である。少し興味を持ってしまった。
そこに漬け込むのが如月先輩である。
「そう。才能」
「どんな」
「そりゃお前……」
如月先輩は長財布の中からオカルトなんかでよく見る「お札」を取り出して、ふっと息を吹きかけた。次の瞬間、お札は赤色の灯をともした。
「……霊能力者の」
「は――――はぁッ?」
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