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不器用な私に手を差し伸べてくれた、あの方をこれからはシンデレラと呼ぶことにしよう。
とある仮面舞踏会でシンデレラと出逢ったのが、明確にいつだったかは思い出せないけど、シンデレラの仮面が認識できるようになったのは、去年の師走。
師走という名にふさわしく、私自身いろいろと忙しなく。また、下手な踊りを練習し始めたときでもあった。ちょっと輪に入ってみたいという思いから……。
そんなある日のこと。シンデレラは私の拙い作品へ暖かい手紙を置いていってくれた。それも何度も。だからその度に、シンデレラが今日も読んでくれた! またお手紙が貰えた! って……まるで、クリスマスにプレゼントをもらった子供のように、一人燥いでは喜びの声を上げていた。シンデレラに読んでもらえる事は、それくらい純粋に、私の小さな胸を嬉しい気持ちでいっぱいにさせたのだ。
そこで益々、シンデレラのことが気になり出し……やがて出逢ったのが、あの夢を見させる切り花のような作品。
本当に強い衝撃だった……初めて、呼吸するように文字の世界を吸い込むことができた私は、これが読むっていうことなんだろうと、胸いっぱいに深呼吸をしながら、沸き起こる感動に息を震わせた。
それでも普通の人と比べれば断然、遅いのだろうけど……私にとっては未知の体験に他ならないことであり、まさに奇跡と呼ぶべきものだった。本当に素敵な作品に、素敵な体験をさせてもらえた、そう思う。
そんなある日、思いがけずシンデレラが目の前に現れ、俯く私に手を差し伸べてくれた。とても丁寧な挨拶を添えて。もし、その言葉が便箋に仕立て上げられていたなら、きっと押し花と香りがセットになった、たおやかなものであっただろう。
そんな挨拶を貰った私は、どうしようどうしようってテンパっちゃったのは言うまでもなく……飛び跳ねるほど嬉しいのに表情は硬い、みたいな感じで、さすがの不器用さだった。
それでもシンデレラは、拙い挨拶を終えた私を、変わらぬ笑みで優しくエスコートしてくれた。私はドキドキする程度のことしか出来なかったっけ……。
それからは私も、シンデレラの作品へいろいろと手紙を置いてみようと決めた。
でもちょっと怖かった。的外れだったらどうしようとか、置いても良いものかとか、やっぱり悩んでしまって。
そうして拙い言葉が綴られた手紙を、そっと置いてきたのは良いんだけれど……たぶん全部、手汗でヨレヨレだったんじゃないかな、恥ずかしい限り。
直接に言葉を交わしたのは、たったの一度だけで、あとは手紙を残し合うようになっていったわけだけど、この一度……私にとっては、とても大切で掛け替えのないものだった。側から見れば、ちっぽけな短いやり取りに見えるくらい、僅かなものだったろうけれど、私にとっては大きかった。
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