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21
シンデレラは、ある日を境に、私が通う舞踏会から忽然と姿を消してしまった。
最後に、たくさんの手紙と天の贈り物を残し、数多の舞踏会へ繋がる深い森の中へ、ふわり溶け込んでしまったのだ。
だから私は必死に、森の中で手を伸ばし何度も叫び続けた。さっきまで見えていた、あの姿を追い求めて、瞬きすら躊躇い探し続けた……けれども、とうとう見つけ出すことは叶わなかった。
皮肉にも、日ごろの感謝の気持ちを直接、言葉にして伝えたいと思い、無い勇気を振り絞ってシンデレラに会おうとした矢先のことだった……。
しばらく呆然と、メトロノームのように打ちつける脈を味わった私は、後悔という言葉や気持ちなんて無きゃ良いのに……そう思いながら、ただただ深い森の中で、朧げな時間を満たしていった。
やがて私は、追憶のシンデレラを探し求むように、今まで貰った手紙を探し始める……でも。
あるはずの手紙は、そこに無かった。
全部……消えていた。
幾度となく孤独を支えてくれた、優しさの詰まった言葉たち……宝箱にしまったはずの大事な大事な手紙たち、大切な大切な温もりたち。
全部、一つも残らず……シンデレラがいなくなると同時に消えちゃっていた。宝物だったのに、すべて消えてしまった。最後の手紙だって、私の書いた新作小説にせっかく残してくれた手紙。それも無くなってしまって……とても嬉しかったのに、お礼の一つすら言えていないのに。
舞踏会を去る者が書いた手紙は全て、去ると同時に消えるという掟を、このとき初めて知った。そして私は、咽かえるばかりの後悔を重石にして、喪失感の海へ沈んでいった……。
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