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でも、たった一つだけ、残っていたものに気付いた。
それは言葉でこそないものの、シンデレラとの記憶をしっかり感じさせるもの。足跡、あるいはシンデレラが手紙を置いた跡、そう言えるものだった。
私は、その優しさの跡を指でなぞり、現れることがないと分かっているのに、どこかにいるシンデレラを何度も何度も呼び続ける。
手紙の跡から、当時の言葉を思い返しながら、切ないエピローグを延々と繰り返していった……淡い希望を打ち消すための行い、一種の自分なりのケジメだったのかもしれない。
その後、戻った舞踏会では、私以外の人々も驚きや悲しみの声を上げ始めていた。シンデレラが消えたことで、今まで賑やかだった舞踏会は一変、哀情に満ち溢れたどよめきが踊る場となってしまっていた。
そして人々の言葉を聞いて分かった。声を上げている人たちは、シンデレラと深く親交のあった人たちだと。
ちっぽけなやり取りしか経験のない私でさえ、あれほど苦しんだのだから、親交のある人たちが悲痛な声を上げるのは無理もない、悲しむのはごく当然……とっても辛いことだというのは、痛いほど伝わってきた。私の知らぬシンデレラの人物像と共に。
そして思った……やっぱりシンデレラは、懇篤が人の姿を模したような、美しく優しき人だったと。このとき、人々の声を聞いて改めて感じざるを得なかったのだ。
なぜ私は、そんなにまで皆から愛される素敵な人から、声をかけて貰えたのだろう。どうして毎日、手紙をくれたのだろう。堂々巡りになることは分かりつつ、何度も考えてしまった……。
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