足あと

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ー昔からあの山の近くでは言い伝えられてきたことがあった。 「森で人の足跡を追ってはいけない。それは守り神のものだから。」 とても昔足跡は子どもにしか見えなかった。森に遊びに行って知らない子と遊んだという子ども達の話を大人は不思議がったが山の植物や動物について教えてくれるという話を聞いて神が自分たちを助けてくれているのだとむしろ感謝するようになっていった。 ある時、ふもとにある家に各地の山で調査をしているという男がやってきてしばらく宿を恵んでくれないかと頼んできた。家族は迷ったが近くには宿もないため男を泊めてやることにした。 数日経った時、男は森で足跡を見たと話した。家の者は驚きさらに話を聞いたが男は足あとを見ただけで誰にも会わなかったと言った。 さらに数日経ったある日男が帰ってこなかった。その日は少し森の奥まで入ってしまったのだろうと気にしなかったが次の日も男は現れなかった。 村人たちは男を心配していたが少しすると逆に安堵の気持ちを持ち始めた。実は男が村に来てから、金や食料が無くなることが多々あり男が森に消えてからぴたりと止んだのだ。村人たちは男がそれらを持って逃げたのだと諦め忘れることにした。 男が消えてから数カ月経ち皆忘れかけていた頃山から男が急に現れた。村人たちは役人を呼んでその男を問いただした。男は家々から金や食料を盗んだことを認めたが山の中で出逢った人に小屋に閉じ込められていた、だから罰はもう受けたとよく分からない事を言い出した。 役人が男を連れて行った後男を泊めていた家の者がそういえば男は足跡を見たらしいと言った。 それを聞いた村人は山の神がこの村を守ってくれたのだと感謝し神を祀るようになった。 その後も山を開発しようとする人が行方不明になり言い伝えと同じ様な事を言う事が何度か起きた。人々は神に感謝しながらも恐れをなし山の恵みをいただき神を祭りながらも足跡には絶対に近づかないようになった。
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