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僕だけの世界
どこまでも広がる白い景色。
その先の真っ青な空。
所々だけ黒が見える山並。
この雪砂漠も空気も今、僕だけのものだ。
新雪にぎゅうっとはじめの一歩を踏み出してみる。『これでもか』というふうに、ぎゅっぎゅっと何回も踏みつける。
もう身体は沈まない。
柔らかくて少しだけへこむ、この白い絨毯を横切ってみる。
登校時間のショートカット。
普段であればここは黄金の稲穂を収穫する場所。 そう、田んぼ。
突如頭の上に甲高くて聞き慣れた声が響く。
声の主は複数いるようだ。
見上げると僕の頭上すぐを掠めるように通りすぎる白鳥が三羽。
水掻きをピタリと胴体に押し付けて、翼を一杯に広げている。首が思いの外長いんだ。初めてこんな角度から見たよ。
真っ直ぐ道路のある方向に歩いていく。
いきなり下にガクンと落ちてしまった。その時僕が踏みしめたのは今までとは違うものだった。
固い沢山の砂利。気が付くと深い側溝の中にいた。水が流れていなくて、本当に良かった。
僕はやっとこさそこから這い上がり、再び白い絨毯のまだ新しい場所に足あとをどんどんつけていく。あっという間に道路に辿り着いた。
さあ今日も一日頑張ろう。
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