1743人が本棚に入れています
本棚に追加
香月さんの問いを直ぐには理解できず、何度か瞬きを繰り返しても、彼の穏やかな笑顔は全く変わらない。
「……オフィスリニューアルのプロジェクトには、絶対、総務部の人に入って欲しかった。」
その中で急に話し始めた香月さんの言葉は、また突然のもので。
「プロジェクトを発足する時から下山課長には協力をお願いしてたけど、忙しいのか、うまく連携が取れなくて。」
香月さんは言葉を選んでくれているけど、あの課長の反応の遅さも、ベースが他人事なのもいつものことだ。
「だからもう、羽村さんに直接交渉に行ったんだよ。」
“羽村さん、頼みます。協力してください。
絶対的に、このプロジェクトは"今のオフィス"を管理してる総務部の力が必要です。“
“新しいオフィスつくるなら、若手の声を反映できるようなプロジェクトメンバーにしないと駄目でしょ。こんな年寄り入れてどーすんの。
___香月。とっておきの子、紹介しようか?“
「…俺は保城のこと、羽村さんの秘蔵っ子として存在を知った。
多分、下山課長にも保城を推薦するよう上手く羽村さんが言ってくれたんだと思う。」
「……、」
そんなことは、知らない。
驚きの色をありありと表情に乗せても、香月さんはやっぱり優しく笑ったままだ。
だって、私はあの日も突然、課長から急に、プロジェクトに“サポート的立場“なんて曖昧極まりない役目で参加するよう押し付けられて。
"「楽しい」って、思える仕事も何処かにちゃんとあるって教えてあげたいんだよね。
総務の仕事の中じゃ、情けないけど厳しそうだから。香月、ちょっと協力してよ。"
"俺が頼みに来た筈なんですけどね……"
最初のコメントを投稿しよう!