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「保城ごめん。
俺、最初はいくら羽村さんが推したって、2年目の子なんて大丈夫かなって正直思ってた。」
眉を下げてそう自白する彼を咎めることは出来ない。
そんなの当たり前だ。
こんな新人に近い奴が急にプロジェクトに入ってどうするのって、私が1番思っていた。
「…でも。そう言われて参加した筈の保城が、ちゃんとプロジェクトの進捗に追いつけるように自分で勉強して、知識付けて。
日常業務の後に、態々リニューアルに関する仕事、残業してまでやってたりして。」
『凄い集中してたけど。なんか煮詰まってる?』
『いえ!!特には。』
『…もしかしてリニューアルのことやってくれてた?』
「ちょっとずつ楽しいって思ってくれてるのかなって感じたら、羽村さんの目論見通りだけど、単純に嬉しかった。
俺は、保城の仕事の姿勢を充分見た上で責任持って発言してる。それを部下にも伝えてたから。
"あの日"の笠下達の言葉は、お酒の席の冗談でも何でも無いよ。」
"保城さんみたいな優秀な人が、うちの部に来てくれたらな〜〜"
笠下さんや小貴さんと飲んだ時の言葉が思い出されると同時に、視界はゆっくりとぼやけていく。
この人は、なんの脈略も無く、
どうしてこんなに畳みかけてくるの。
とっくに鼻の奥がつんとして、涙腺を刺激されまくっている。
このプロジェクトに関わるまで、こんな風に仕事で感情が揺さぶられることは、一度も無かった。
いつも笑顔で、淡々と引き受けて、こなして。
「楽しい」なんてそんな感情は、とっくに諦め切った。
でも、本性を頑なに仕舞い込んで、ただ仕事をこなすだけの日々は必死だったけど、本当は、どこか寂しかった。
そのことに、きっとほむさんは気付いていた。
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