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◻︎
実は、うちの会社と枡川さん達の勤める○○は、案外近い距離に位置している。
徒歩でも行けるし、仕事を終えた私も自分の足を使った。下り坂ばかりだから、余計に楽に辿り着いた。
逆で考えたら、枡川さん達もいつもうちを訪ねてくる時は徒歩だったけど、上り坂ばっかりで割と大変だっただろうな。
それでも勢いよく歩く彼女を想像すると、笑えてしまう。
高層ビルが立ち並ぶオフィス街は、今日の仕事を終えたビジネスマンが行き交う。地下鉄へ繋がる階段へ沢山の人が吸い込まれていくのを横目に、目的地へと足を進めた。
そうして立派な自社ビルのエントランスに足を踏み入れた私は、等間隔に並ぶ小洒落たベンチにとりあえず腰掛ける。
チラリ腕の時計を確認すると、枡川さんとの約束の時間まで、まだ少し余裕があった。
今日、ここに来たのは彼女と会う為。
あとは、もう1つ。
「____保城さん。」
「…南雲さん、こんばんは。」
視線を上げた先では、深い青のノーカラーシャツがよく似合う癒しオーラ全開の南雲さんが微笑んでいた。
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