These05.

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視界がゆらゆらと揺れていたけど、私が泣くのは絶対に違う。 体に力を入れて、ただジッとその場で下唇を噛んだ。 「…俺じゃなかったか。」 「……え?」 柔らかさを纏う笑顔と共に、静かに南雲さんは呟く。 「___本当はビール、好きなんでしょ?」 困ったように笑って告げられた問いに、驚きを隠せない。 「……どうして。」 「さあ、なんでだろ?」 優しい笑顔の中ではぐらかす彼は、私にその答えを告げる気は無いらしい。 「でも、何にせよ、 保城さんは俺の前ではそういうとこ、見せなかった。 ___それがもう、答えだね。」 穏やかな包む声で確かめるように言われてしまえば、否定は出来なかった。 「……私は、缶ビールとサキイカ女です。」 降参してそう不思議な告白をすると、南雲さんは垂れた瞳を一層細めた。 「……全部見せたいって思える人なんか、当たり前に大事にしたくなるよな。」 それは俺、勝てないわ。 そう笑った彼に頭を下げて、話を終えた瞬間。 「保城さん!すみませんお待たせしました! …あれ、南雲さん??」 フロアから爆速で一階のここまで駆けつけたのか、ハキハキと凛とした声の主は、一つ括りをしたヘアスタイルの前髪が若干乱れている。 「枡川お疲れ。」 「…え、2人はお知り合いだったんですか?」 「まあね。 俺は残業終わったら、彼女にドタキャンされて可哀想な瀬尾に構ってもらお。」 「な、何故それをご存知で…」 ドタキャンは、どうやら本当だったらしい。 顔を険しく気まずくして呟いた枡川さんに、南雲さんはただ笑っていた。 「…じゃあね、保城さん。」 「はい。」 彼は、"またね"は、使わなかった。 私はその気持ちにもしっかりと頷いて、もう一度深くお辞儀をした。
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