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去っていく南雲さんの背中を一緒に見守っていた枡川さんへ視線を向けると、綺麗な顔に「?」を浮かべている。
「…枡川さん。」
「はい?」
「私は枡川さんに、言えてないことがあります。」
「…え?な、何でしょう。」
「……でも。
伝えるにはお酒の力を、借りたいです。」
小さな声でそう言うと、彼女は形の整った瞳を瞬いて、やはり屈託ない笑顔を見せる。
自然と2人、足を外へと向けて進める中で、
「私、おすすめの居酒屋あるんです。
そこにお連れして良いですか?」
「勿体ぶらないで大丈夫です。
いつものとこですよね。」
「……すいません。
あのお店しかほぼ知らないので…」
ならどうして、ちょっと見栄を張ってみたのだろう。
彼女の言動に思わず笑いながら歩みを進めて、
「____私も、あの店が良いです。」
そう正直に言えば、枡川さんはとても嬉しそうに表情を崩した。
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