These05.

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「…保城さん。」 「なんですか。」 ヘタレですねって、笑ってやりたいのにどんどん私も視界がぼやけて阻まれてしまう。 そんな私達はお構いなしに、店内はガヤガヤとした喧騒に包まれている。 「ライバルと友情は、やっぱり共存できないでしょうか。」 「…少年漫画みたいなこと言わないでください。」 「……ひとつなぎの大秘宝、一緒に探しませんか。」 「嫌です。 桝川さんの船、勢いよく出発してすぐ遭難しそう。」 「ひどい…でも否めん…」 交わされるくだらない会話の中でも、彼女は泣きっぱなしで、私は自分のバッグからハンカチを取り出してそれを差し出した。 「さすがにおしぼりで拭くのはやめてください。」 「…ありがとうございます。 保城さんは、出会った時からやっぱり私が憧れてる女性です。」 「……変わってますね。」 「そうですか?ちなみに、おっさんのところも全部、好きです。」 「やまかしいです。」 サラリーマンが集う、お洒落でも何でも無い、こじんまりした居酒屋。 まだ一応若い私達が、テーブルにはおっさんのおつまみだらけで、ビール片手に泣いてる光景はどうなのかと思う。 だけど素直な気持ちを、この人には多分吐き出せる。 _____吐き出したい。 「…枡川さん。」 「はい。」 「"此処"で、仕事の愚痴に定期的に付き合ってください。」 私がそう言うと、枡川さんはきょとん、と瞳を丸くして、それから整った顔を屈託なく破顔させた。 それを見てたら私はまた鼻の奥につんとした痛みがあって、少し焦る。 最近私は、涙腺が馬鹿になり過ぎている。 でも。 ___"自分を曝け出したいって思う瞬間は、 紬のタイミングで、 これからいつでも、ゆっくり決めれば良い" 心の奥であの男が笑っている気がして、やっぱり涙が出た。
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