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「私は割と、保城さんに近づきたいっていう熱意は誰にも負けて無いと思ってたんですが。」
「なんの話ですか?」
漸く涙の止まった彼女は、嬉しそうに微笑む。
「…久箕君には、敵わないかもしれないです。」
「…え……?」
そうして突然、今しがた思い浮かべてしまった男の名前を口にする彼女に顔が固まる。
「久箕君は、よくシフトに入ってたし、私はここの常連なので。
おのずと顔を合わせる機会は多かったんですが、彼の名前を知ったのは最近のことです。
ちょっときっかけがあって、より話すようになって。
でもね、来るたびに必ず聞かれるんです。」
____紬は?って。
"なんだ、桝川さんと瀬尾さんか。"
"失礼じゃない?"
"紬は今日は、来ないですか?"
"名前呼び……!?いつの間にそんな仲良くなったの!?"
"仲良くってか、俺が一方的に押しまくってるだけっすけど。"
"……好きなんだね。"
"んー…、
でも、今の俺じゃ駄目ですね。"
"…どうして?"
"中途半端な俺には勿体無いくらい。
_____紬が、めっちゃ可愛いから。"
「な、んですか、それ。」
変なこと言わないでよ。
最後の文章、全然繋がってないし。
「久箕君は、保城さんが大好きってことですね。」
そう思うのに、枡川さんの追い討ちのせいで、折角止めた涙はあっさりと、再び流れ始めた。
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