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あの男が、
何気なく投げてくる言葉がいつも怖かった。
だって認めたりしたら。
曝け出せばその分、否定された時の痛みが大きい。
"…え!?紬って俺のこと好きなの?惜しいなあ。"
昔、かけられた言葉に
あの頃の私は、容易く傷ついた。
そして深く心に刻まれた。
女の子は、
ちゃんと努力しなきゃ受け止めてもらえない。
素の私じゃ、好きになってもらえない。
いつかまた好きな人ができたら、
今度は"惜しい"だなんて言われない自分で居たい。
ずっとそう、思ってきた。
_____でも、本当はね。
あのヘタレの2人みたいに、
真正面からの恋をしてみたかった。
"あんたが生ビールとサキイカで喜んでるとこ、あんまり他に知られたく無い。"
"……な、んで…?"
"勿体ないから。"
惜しい、じゃなくて
勿体ない、なんて。
あんな風に言ってくれる人には、
私はもう二度と、出会えない気がするの。
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