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夜をひっそり包む闇に全くそぐわない明るい光を放つ建物。
漸くたどり着いた私は、足早にお店の前まで駆けて中を覗く。
「……居ない、」
どうしよう。
もうバイトの時間は終わってしまったのだろうか。
ここに来るまで懸命に保っていた勢いが急激に散らばっていく感覚を、肩で息をしながら感じる。
立ち止まってなんとか思考を落ち着かせようとする中で、ふと視線が隣接するビルの方に向いた。
あの男は、自分が休憩のタイミングになると。
勝手に私の黄金コンビを携えて、
話に付き合えって強引に誘ってきて。
最初から本当にずっと、ズカズカと遠慮が無かった。
じわり滲む視界のまま、何かに誘われるようにそちらへと足取りを進める。
コンビニをずっと見ていたから、暗い路地に近づくほどに目の中の光の残像にチカチカしてしまう。
このまま会えなかったら、どうしよう。
「……会いたい。」
ぽつり、意図せず気持ちを漏らしたら余計に涙が出て。
さっき買ったものを持つのとは違う方の手でそれを拭おうとした瞬間。
「__________紬。」
「っ、」
溢れる涙に気を取られて、
あまり前方を確認していなかったから。
闇の中から急に伸びた手が、
涙を拭う私の腕を掴んで。
それに驚いたのと同じタイミングで、
そのまま引き寄せられて
ふわりと何かに包まれる感覚があった。
_____本当は、"何か"の正体なんて
触れられた時から、分かってたかもしれない。
「……しゆき…?」
暗くて視界が全然、鮮明じゃない。
それなのに自分で追い討ちをかけるように名前を呼べば、もっと視界はゆらゆらと歪んで、悪化する。
またポロポロと飽きることなく涙が出てくる中で、私の問いかけに答えるように、男はぎゅう、ともはや掻き抱くような強さで抱きしめ直してきた。
前にこうやって抱きしめられた時、
私はどうしても応えられなかった。
___もう、止めたく無い。
呼応するように、男の背中に腕を回して、最大限に力を強めると、ふ、と耳元で優しく空気が震えた気がした。
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