These05.

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「俺を、"好きなもの晒せる人"の中に、入れてくれんの…?」 再び、ぎゅう、と痛いほどの力を込めて 抱き締めてきた男は、そう尋ねてくる。 どこかいつもより弱々しく鼓膜を揺らす言葉。 それだけでまた涙は簡単に瞳を滲ませた。 「…だって私が選んで良いって、梓雪が言った、」 「……あの男は?」 「……え…?」 予想外の質問に、戸惑いながら聞き返すと、 ちょっと不服そうに細まる三白眼が私を覗き込む。 状況把握をしていないことを、瞬きを繰り返すしかできない私で感じ取ったのか、梓雪は溜息を漏らして、口を開いた。 「…この前瀬尾さんが、永遠に喋ってるすごいウルサい人と、もう1人。 やけに落ち着いた雰囲気の男、居酒屋に連れて来た。」 "え!?保城さんにアプローチなう!?" "お前、ほんと声でかいし煩いな。" "合コンの時そんな雰囲気一切出さなかったのに!ムッツリですか?!" "…どうせお前が煩くて、他の人がどうこうする隙を与えなかっただけだろ。" "その通りだし、俺はお前を慰めるために合コン行ったみたいだった。" "え。で、何、ちゃんとまた会う約束取り付けてる感じですか!?" "んー…どうだろう、電話して俺の気持ちは伝えたけど。" "隠れ肉食系じゃないですか!!" "まじで黙って。" 「……南雲さんのこと…?」 その会話から察するに、きっと瀬尾さんと来たのはまちがいなく古淵さんと南雲さんだ。 「名前は知らないけど。」 やっぱり不服そうな顔の男は、声は低いくせに ぐい、と再び私の瞳に溜まった涙を拭う手つきは優しいままだった。 見慣れない筈の黒髪が、夜の冷たさに晒された風でふわっと靡くのを見ているだけで、心がすごく騒がしい。
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