1742人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
いつもの席ですよね、そう言おうとした瞬間。
その男の後ろにいた小柄な女に気付いて
言葉も、動作も、全てが止まる。
「こんばんは」
男と同じようにそう挨拶してきた、その高めの声を俺は確かについ最近、耳にした。
でも、あの時とは何もかもが違う。
大きめの瞳を細めて、丁寧に色の塗られた唇に弧を描きながら花が咲いたように笑って。
髪型も服装も、干物女の時とは似ても似つかない。
___でも。
戸惑う俺を察したのか、男はカウンターでも良いかと聞いてくる。
案内を終え、とりあえずおしぼりを差し出した時。
「ありがとうございます。」
しっかりとこちらへ告げた女の声は、やっぱりコンビニで聞いたものだと、根拠もなく言い切れた。
いつもこの男が一緒に来ていた、ハイボールが好きなよく笑う女はどうしたのか。
微妙なもどかしい距離感で、いつも同じ席でお酒を飲んで笑い合ってる2人をなんとなく観察するのは、すっかり俺の趣味の一つになっていたけど、本命がこの女?
ぐるぐると、流石にただの店員が聞けるわけもない疑問が浮かんでは消えて、バッシングのスピードが少し遅くなっていることに気づく。
最初のコメントを投稿しよう!