番外編1

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ジョギングを終えた俺は、そのまま、あの女の行きつけであるコンビニへと向かう。 幸い、俺が働いてた時にシフトがかぶっていた人間は、この早朝には入って居ないらしい。 見知らぬ店員ばかりだった。 商品の配置を分かり尽くした店内で、ある2つを手に取ってそのまま足早にレジへ向かう。 "この2つ、どこがそんな美味しいの。" "……え?ビールは喉というか心に沁みるし、サキイカは食感も味も全部好き。このコンビネーションは100点でしょ。" "ふーん。" "何?苦手なら無理しなくて良いよ?" "…紬、馬鹿だなあ。" "何が。" 購入し終えて、コンビニを出ながら昨日の会話の続きを思い出すと、思わず口角が上がってしまう。 急に馬鹿と言われて、紬は不服そうだった。 俺は確かに、今までお酒もそんなに飲んでこなかったし、それに付随して"おっさんメニュー"と呼ばれるおつまみも、あまり食べてこなかった。 でも、昨日あんまり幸せそうにそのコンビを愛でる紬を見て、それらを口にした。 "大事な人の好きなものは、気になるでしょ。" "…ふーん。" ぶっちゃけ、食べた結果そんなに凄く好きにはなりそうに無いけど。 可愛い彼女の好きなものが気になるのは当たり前じゃん。 そう言ったら、顔を真っ赤にするくせに、気にしてないフリで視線を逸らされる。 誤魔化すように再び缶ビールを口にする紬に、理性を最大限に働かせることに注力する羽目になった。 なんかもう、可愛いしか出てこなくて自分の重症具合に気づいてはいるけど。 今だってほんの数十分離れただけで、あの干物女にもう会いたくなってるから、とっくに手遅れだとは思う。 袋も貰わず剥き出しのままの缶ビールとサキイカを抱いて、苦笑いしつつ再びマンションを目指した。
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