番外編2

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ほむさんとは使っている駅が違うので、会社前で別れて歩き出す。 寒さがすっかり本格化して、暗くなった夜はより冷え切った空気が簡単に纏わりつく。 ノーカラーコートのポケットに両手を突っ込んで、その冷たさに耐えようとすると、肩が思わず上がってしまう。 駅へ向かおうと急ぐヒールが、軽快な音を鳴らせている中で、バイブの振動をバッグ越しに感じた。 「……もしもし?」 ”あ、もしもし紬さん?枡川です。 今週もお疲れ様でした!” それが着信だということと同時に相手の名前を確認して、すぐに耳元にスマホを当てた。 鼓膜を揺らすのは、いつもの明るい彼女の声で、それだけでふと、表情が緩む。 「…お疲れ様です、どうされました?」 ”あの、今日実は、 いつもの居酒屋に私の親友と行こうと思っていて。 紬さんの話をしたら是非会いたいって言うもので… 突然ですがお誘いしてみました。” 顔なんて分からない筈なのに、少し恥ずかしそうに告げているのだろうと分かる。 「…ちひろさん。」 ”あ、やっぱり急には駄目ですよね?” 私とちひろさんは、居酒屋でお互いに泣き合ってから、定期的に連絡を取り合うようになった。 あの居酒屋で集合するのもすっかり定番で、彼女と、彼女の親友に会いたい気持ちもある。 ____でも。 「……私、自分の中で最高の金曜日の過ごし方があって。」 ”え、なんですか気になります。” 突然の私の切り返しにも戸惑うことなく、そう問いかけてくれるちひろさんに、私は色々と甘えている。 歳上なのにこの人が全然壁を作らないから、私はすっかり友人のような気持ちになってしまっている。 「缶ビール片手に、サキイカの袋パーティー開けして、金曜ロードショー観るんです。」 ”…うわ!!最高ですね。 私も居酒屋行かない時は、家で塩辛食べてハイボールですよ。” 「…だけど、最近ちょっと、 その過ごし方が変わってしまいました。」 ”……はい。”
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