発表会の日は雨だった

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「館長ー! おはようございまーす!」  エスカレーターで上がってきた響子ちゃんが、銀色の大きなスーツケースを右手でガラガラと引きながら元気よくロビーにやってきた。 「響子ちゃん、おはよう。相変わらず元気だね。社会人になってちょっと大人っぽくなったんじゃない?」 「えー、本当ですか? 大人のオーラ出ちゃってます?」  彼女はちょっと腰を横に突き出してポーズを取った。  相変わらず楽しい子だ。  響子ちゃんとここで会うと、今年ももうすぐ終わりだなと実感する。  彼女が所属しているピアノサークルは、毎年十二月にこのホールで発表会を開いてくれている。  僕がここに館長としてやって来る前からやっている発表会で、今年で十年目ぐらいになるはずだった。  響子ちゃんは、大学生になってからこのピアノサークルに入っていて、僕が彼女の演奏を聴くのは、今年で五回目になる。  最初に聴いたときからよく弾ける子だったけど、それから毎年少しずつ上手になってきていたから、今年はどんな演奏をするのか楽しみだった。
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